おからのField note

生態学を専攻する博士課程の学生の日記です。野帳のようにつらつらつらと。

白貂を抱く貴婦人

ダビンチ:「白貂を抱く貴婦人」2度大幅描きかえ - 毎日新聞
「レオナルド・ダビンチ(1452〜1519年)の名画「白貂(しろてん)を抱く貴婦人」(油彩画、ポーランドクラクフのチャルトリスキ美術館所蔵)が2度にわたりダビンチ自身の手で大幅に描きかえられ、当初はテンのいない女性だけの肖像画だった可能性が高いことが、フランスの光学研究者の研究で分かった。」
 
「表面に描かれたテンの下の層からやや小ぶりで写実的な別のテンの姿が浮かび上がった。さらにその下の層からは、貴婦人の右手がテンを抱かずに左手首に置かれている絵も見つかった。コット氏は「ダビンチが何らかの理由で描きかえた可能性が高い」とみる。」
 
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以前なんとなく調べたときは、wiki 白貂を抱く貴婦人 - Wikipedia 曰く白貂と言いながらフェレットのことを指す、と書かれていたので「そっかーフェレットかー」としか思わなかったのだけど、少し見て行くと面白い。
 
 
実はこの作品のイタリア語タイトルはDama con l'ermellino、英語タイトルは Lady with an Ermine
 
つまりオコジョ。
 
ええええ
 

参考

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③がオコジョ。メスで約150g、オスで300gほど
これに対してフェレットはだいたい⑥のアメリカミンクと同じくらいで、メスで約500g、オスで約1kg。
テンは⑦のクロテンや⑧のニホンテンで、メスで約800g、オスで約1.5kg。
 
 
少なくとも、貴婦人が抱いているのはオコジョのサイズではないだろう。
 
 
個人的には、フェレットにしては顔が細長い三角顏。。
テンぽいけどなあ。。
 
 
 
でもダ・ヴィンチの作品ともなれば、綿密に下調べをして作品を作っているに違いない。
 
ちょっとした勘違いでしたーというわけはない。
 
きっとこの動物は、ダ・ヴィンチがこの作品に載せたかった多くのメッセージを背負って、凛としてそこに描かれている!(と信じる)
 
そうして個人的に頭の中で描いたシナリオは以下のような感じ。
 
ダ・ヴィンチ、一度肖像画を完成させる
→何らかのきっかけで、より崇高な、純粋な、気品ある肖像にするために、それらの象徴であるオコジョを追加(美しい毛皮を持つオコジョは、穢れるくらいなら死を選ぶ気高い生き物と考えられ、かつ高価な毛皮として重宝されていた)
→描いてみたけどなんかぱっとしない(オコジョの顔は気品があるというよりはかわいらしい、細くて小さくて貧弱、欲しいイメージに合わない)
→描き直し
フェレットorテンのサイズ感いいね!
→毛皮はオコジョそのままに、ダ・ヴィンチによる創作
→そもそものコンセプトはオコジョなので、タイトルにはオコジョとつける
→中国や日本で見た人はテンと認識
→白貂を抱く貴婦人と命名 
 
個人的にはこれでわりと納得なのですが、如何せん歴史的背景など知らなさすぎるし、詳細に関しては今後の調査の結果を待ちたい。
 
(追記:詳細が20日の記事に載っていた(レオナルド・ダビンチ研究:新たな一石 テンのいない「白貂を抱く貴婦人」 2度描きかえの謎 - 毎日新聞 http://mainichi.jp/shimen/news/20140920ddm007030009000c.html)これによると、貴婦人はミラノ公ルドビコの愛人、チェチリアの肖像画とされ、当初はチェチリアのみが描かれたが、チェチリア自身の要望で(正妻でなかったことから2人を同じ絵に描くことは難しかったため、)ルドビコの象徴である白貂をくわえた?その後さらに大きくかつ筋肉質に描きなおしてもらった?ほー。)
 
 
 
でもこんなことを考えているうちに、各国や日本における各動物種の登場する作品や、それぞれが象徴するものについて知りたくなってきた。
 
各国で動物種のイメージが似ていたり、違ったり、、人とその動物種の距離の近さによっても傾向が出てきそう。
 
 
イタチ科はどの程度把握されていたのか。
イイズナが大きくなったらオコジョ、イタチ、テン、カワウソ、ラッコになるとか、思われていた時代もあったんじゃないだろうか。
いつの時代にどのくらい認知されていて、どのくらい種によって違う象徴として描かれていたんだろう。
 
各種の象徴するものは、各地域で異なる生態(食性など)を反映したりしてないだろうか。
 
 
 
楽しそうー!
 
 
(ちょっと調べていく過程で、黒のベタ塗りの背景や顎下につながる不思議な髪型はどうやら別人によって加筆されたものであり、本来は濃淡のある光を感じさせる背景であったこと、加筆された際に金の刺繍が施されたベールと髪の毛が混ざって描かれてしまったようであることなどを知った。一枚の絵でこんなにドラマがあるなんて、とっても面白い。古い物好きとしてはぞわぞわする。このエピソードを知ったことで、更に興味が湧いてきた)
 
 
いい文献やレビューがないかな。
というわけでちょっと調べてみよう。
 
 
以上、ただの妄想と備忘でした。